公開: 2023年9月22日
更新: 2023年9月22日
世界の神話で、「死」は、どのように語られてきたのでしょう。神話に登場する神々の多くは、エジプトでもメソポタミアでも、不老不死である場合が多く、人間のように死ぬのは、古代ギリシャの神々です。その古代ギリシャの神々も、簡単には死にません。古代インドの神々だけは、人間と同じように死にます。古代ギリシャの神話で人間が死ぬ理由は、人々が増えすぎると食料が不足するため、戦争で人間の数を減らさなければならないからだとする説が述べられています。
インドネシアには、体からあらゆる宝物を生み出す特別な娘を、そそれを嫉妬した村人が殺し、その死体を細かくちぎって埋めた後、その埋められた死体の断片から、芋などの穀物が生まれ、その娘を殺した人間の子孫は、そのことに怒った神の命令で、そのようにして生まれた芋を主食として食べなければならなくなったとする神話があります。この神話に似た話は、日本の古事記や日本書紀でも語られています。農耕文化に特有な神話の原型と考えられています。
古代の人々にとっては、人の死は、新しい命の誕生と対になっているもので、新しい生命の誕生のために、古い生命が終わり、死ななければならないとする考え方だったようです。古事記のイザナミの神が、「私は1日に、千人の人を殺す。」といったのに対して、イザナギの神が、「ならば私は、1日に千五百人の子供のための家を建てる。」といった話が残されています。古代の人々にとっての「人の誕生と死」は、そのように対になった概念だったのかもしれません。